無銭飲食

奇数月の第3水曜日は、公民館での古布回収日。
それは昨日のこと。

衣替えで二袋出た古布を公民館へ持って行くまで、そう。13:30まで、
私は確かに『しあわせ』だった。

14:00前
自転車のハンドル左右に1つずつ袋をさげ、家の鍵をジーンズのポッケに入れ出発。
袋の取っ手が破れたので、気をつけながら自転車をこぐ。
公民館到着まで3分。
無事、袋が破れることなく古布をオバちゃんへ渡す。
渡した途端、気づく。

「家の鍵がない!」

一目散で来た道を自転車で引き返すこと3分。
鍵は皮革でできたキーホルダーに入っている。
玄関の鍵1本、母宅のと思われる不確かな鍵1本、スポーツクラブのロッカーキー1本。
結構な大きさなので、落ちていたらすぐ見つけられる。
はずなのに。
ない!
どこにもない!!
経っててもせいぜい10分くらい。
なのに、ない。

自転車にまたがった時、確かに一瞬「鍵、落ちないかな?」とは思った。
その途端、袋の取っ手が破けて、そっちに気が行ってしまったンだった。
あの時、鍵は手で握って行けば良かっただろうか?
なんなら、口にくわえときゃあ良かったのか?
いっそ、玄関の鍵かけなくても良かったんじゃなかろうか?

全ては、後の祭りでぴ~ひゃらら。

とにかく探そう。
ないと、家に入れないじゃん!
まずは地面を見ながら、通った道を往復。
次に溝を覗き込みながら往復。
さらに誰かが拾ってどこかへ乗っけてくれてるかと、塀やら花壇やらを見ながら往復。
ない……。
いや、知らない人の鍵は見つけた。
塀に1本、溝に1本ずつ見つけた。
でも私の鍵はないのだ。
鍵なんて当人だけに重要であって、それ以外の人にはなーんの役にも立たない代物じゃん?
なんでない??
誰だー持ってったのはー!! ちきしょー!!!

公民館まで往復6分くらいだし、すぐ家に戻るつもりだったので、私は鍵しか持たずに出かけた。
ケータイもお金もない。
さらに近所ということで、寝巻きにしてもいいようなTシャツにカーディガンを羽織った身なり。
髪なんて寝癖ついたままだもの。

どーするワタシ!?

とりあえずオット君に連絡して、なるべく早く帰って来てもらわねば。
しかし、どうやって連絡する?

そうだ、母だ。

自転車で10分弱のところに母が住んでいる。今日は仕事は休みのはず。
で、母宅マンションへ到着。
自転車置いてエレベーターまで走ってノロいエレベーターでジリジリしながら6階へ。
人差し指が折れんばかりにイヤホーンを押す。
……
押す。
……
も1回押してみたよ、いないのは分かったんだけどね。

しばらく6階から景色をぼんやり見てたけど、しょうがないからまた家に戻って、見落としてないか公民館の道を行ったり来たり。
その頃には、お日ぃサンはカンカン照りだ。
近所なもんだから、UVなんか塗ってない。
ようこそメラニン色素。
ひ~!

とにかくオット君に助けを求めねば。電話だ電話!
近くに友人が住んでるが、仕事に行ってて留守だろう。
さらに近くに妹が勤務する病院があり、今日は妹の出勤日。
だが、どうだ?
汚ったない格好した姉がいきなり「金を貸せ」と訪問しに来たら?
……
ダメだろう。
職場での妹の評判が危なすぎる。
仕方がないので交番へ。

時すでに15:15
お巡りさんに事情を話して電話を借り、ようやくオット君へ電話。
オット君も私のドン臭さに少々慌てた様子。
「20時の予定でいたけど、なるべく早く帰るから。
 途中どこかでまた電話ちょうだい、あ、カネがないのか! あーもー子供か!?
 いいや、母んチに着いたら連絡ちょうだい」

私は子供ではない。
子供以下だ!
そこらへん歩いてる子供だって100円くらい持ってるだろう。
とにかくそう確認し合い、交番に鍵紛失届けを提出して家に戻る。

15:30(時計がないので予想)
もう1度探そうと、家から公民館をさらに2往復。
すると、見ず知らずのおジイが。
「どうしたの?」
「鍵、落としたんです」
「あっちに赤い鈴がついた鍵があったよ」
「それは違います」
「あそこだあそこ、ホラ、赤い鈴の鍵だよ」
仕方がないので一緒に見に行き、これではないと伝える。
そして再び、母宅マンション。
母、まだ帰らず。

え~んえ~ん、お母さんがいないよーえ~ん。

6階から階下を眺めるとノラ猫がいた。
しばらく見てると、子猫が2匹いた。へへ。

さらに再び、家と公民館を往復して探す。
私の目はさぞかし皿のようになってたことだろう。
するとまた、さっきのおジイが!
私と会ったことは忘れてるようだ。

「何してんの?」
「……」
「道になにか付いてンの?」
「あーもーうるせージジぃー!!!」

いや……。
そう思っただけ。
すごく言いたかったけど思っただけで、「鍵、探してます」と、ちゃんと言いました。
するとおジイ、思い出したのかどうか、すーっと立ち去る。
……

16:20
さらにまた再び公民館へ行き、図書館で休憩。
水飲み場を探すが、ない。
公園でも探したが、なかった。
誰か私にお水を~。
朝食の後、サラダ煎餅2枚とポカリ半杯飲んだきりで現在に至る。
自転車乗り放題で汗だく。
ノドカラカラ。
死ぬ?
図書館で雑誌を取ろうと立ち上がると眩暈が……。
死ぬ?

17:00
休憩したので、再び母宅へ。
……いなかったよ。
きっと病院でも行って、その後、美容院でも行ったのだろう。
それくらいの留守の時間だもの。
母宅はもう諦めて家へ戻り、公民館までもう1往復し、さらに歩いて1往復して探した。
こんなに探してないんだから、あるワケがない。
お金がないって一人ぼっちだなぁと、脱水状態でぼんやり思う。
そして。
無一文のくせにロイヤルホストへ入った。
デミたまハンバーグとドリンクバーを頼んだ。
食べて、とりあえず落ち着こう。

さて。(ゲップ)
オット君にも連絡取れてないし、ワタシは無銭飲食だし、これからどうしよう。
ところで今何時?
時計のないロイヤルホスト。
とりとめのない気分でドリンクバーへ行くと、
「おお!!」
コーヒーマッシーンに時計が!


18:21
そろそろオット君は、きっと急いで家に帰ってくることだろう。
片道15kmを必死に自転車こいで。

ここでワタシの予想
・家に私の自転車が置いてあるということで、母宅には行ってないと考えるだろう
・あれから連絡ができてないから、今もまだ連絡取れる場所にはいないと考えるだろう
・てことはロイヤルホストか?タマちゃんロイヤルホスト大好きだからなと考えるだろう

ということで、お金を持ってワタシを迎えに来てくれるに違いない!

20:39
え~んえ~ん、パパが来ないよーえ~ん

オット君は、もしや私の予想通りには考えてくれてないのか?
シビレが切れた。
しょうがないじゃん。
ロイヤルホストのお兄ちゃんに無銭飲食を告白し、電話を貸してもらった。
事務所にかけるが、いない。
ってことは家か!?
家にかけると、出た!
でも、なんだか憮然とした声。
ロイヤルにいると言うと「ええ!?」と驚いて、すぐ来てくれた。

そして聞いた、オット君の予想を。
・家に自転車があるから母宅には行ってないのだろう
・てことは駅前で母と待ち合わせてお喋りしてるのだろう
・でもなぜ俺に連絡しない? あ!お喋りに夢中になっているに違いない!

そして時刻は20:39。
私から電話が入り、財布片手にロイヤルへ走らされーの、1606円払わされーの。

オット君は18:00には家に到着していたという。
帰ってすぐ私の母へ電話するが、その番号は昔住んでた家の番号で、
「全然知らないオバさんが出た!」
次に私の妹に母の番号を聞こうと電話するが、勤務中につき連絡が取れず。

結果、お互い待つこと3時間弱。

この間の私の妄想。
鍵拾った人が鍵を探す私を待ち伏せして私の後をつけて部屋がバレて拾った鍵で中に入ってたまたま昨日おろした1万円を盗んでネコにあんなコトをして……ぎゃーーー!!!
……
まさかね。
でもやっぱり誰かが私の後をつけて1万円盗んでネコにぎゃーーー!!!
まさかまさか。
と、リピートの嵐。

しかし、こういうコトが起こると、本当にいろんな要素が合わさって、ドツボにはまってドッピンシャンだ。
オット君が、私と母がお喋りしてるという確信を持つ、ちゃんとした前フリがあったのだ。

実はこの5日前にも、鍵事件があった。
その日はオット君と一緒の通勤で、家の鍵はオット君がかけた。
なので私は自分の鍵を家に忘れていたことに気づかず、帰宅した時は家に入れなかった。
ただ、その日はちょうど母宅でご飯を食べる約束をしていたので、そのまま母宅で待つことに。
オット君に「鍵が家の中だから早く帰ってきて~!」
と言ったくせに私は母宅で長居をし、オット君より1時間も後に帰宅したという前科があり、さらにその数日前、母と電話で3時間半お喋りしたという前フリもあったから、私が連絡してこないのも、お喋りに夢中になったのだろうと思ってたらしい。

いくらなんでも鍵失くしたんだから、連絡取れるんだったら絶対電話するよ!

そう力説したが。
今回のことで、私に対してオット君の信用が全然なかったことが発覚。
なぜら???

ただ、今回の件でいろいろ修正することもできた(負け惜しみ)。
まず、緊急連絡先の更新(オット君からウチの母へ)と、今後の鍵対策。
そして。
もう大人なんだから、たとえ徒歩1分のコンビニに行くのでも、ポッケに突っ込むだけで出かけないコト。
バッグにおカネとケータイと鍵を入れて出る。
UV塗れ。
髪梳かせ。
……
ちゃんとしようと思った。ホントに。
姉妹で同じ血液型なのに、私とは大違いの用心深い妹を、心底、羨ましいと感じたこの日の出来事。

今回の勉強代として、スポーツクラブのロッカーキー弁償がいくらになるか?だ。
5000円くらいは取られるかもしれない。

私が入れなくなった家ではパソコンつけっ放しで、ポカリも飲みかけ。
事情知らなくてこの状態見たら拉致されたと思うよ、と言われた。
誰がこんなオンナ、さらってくれるというのだろう。
3時間自転車乗って、無銭飲食してただけだ。

「タマちゃん、今日だけで5歳は老けたね」

そりゃあ計7時間も手ぶらで外ウロついてたら老けるだろーさ。
てことは、見かけ50歳?

それもこれも、家の中にいるネコが鍵を開けてくれたら問題ないのに、と思う。

だってこんなコトができるのだ。

玄関の鍵くらい開けられるだろうに。

目が見えないのに引き出し開けるネコ

【画面が出ていない場合はコチラから】

本当にサンが鍵開けられたら、
大迷惑だな。

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見に来てくれてありがとう